もし、13個のオレンジを3人で公平に分けるとしたら、あなたはどうしますか?
「4個ずつ配って、残りの1個を正確に3等分する」
そんな答えを考えたあなたは、とても誠実で論理的な人です。
世の中には「思考の角度」を変えて様々な正解を導き出す、不思議な思考法が存在しています。
それが、本書『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』で解説されている「ラテラルシンキング(水平思考)」です。
ラテラルシンキングでのオレンジの分け方は記事本文で解説していますのでお楽しみに。
これまでの学校教育では、一つの正解を導き出すために論理を積み上げる「ロジカルシンキング」が重視されてきました。
正解のないビジネスの現場で、論理だけで勝負を挑むのは、あまりに過酷な戦いです。
しかし、その戦場で、驚くほど軽やかに、最小限の力で大きな成果を上げている「ずるい」人がいます。
そんな「ずるい考え方」を学び、あらゆる困難な道をショトカ(近道)に変えていきましょう。
ラテラルシンキングとは?
まず「ラテラルシンキング」とは、日本語で「水平思考」と呼ばれます。
ロジカルシンキングが「AだからB、BだからC」と階段を上るように進むのに対し、
ラテラルシンキングは「いきなりCに到達するためにどうするか」ような考え方です。
例えば、山を登ると想定してみましょう。
- 「ロジカルシンキング」では「登るにはどうすればいいか」→「装備が必要」→「装備を買いに行こう」→…と筋道を立てて唯一の正解をだします。
- 「ラテラルシンキング」では、
- 山頂へ行くが目的なら「ヘリコプターを使えばいい」
- 景色がみたいのなら「ドローンを使えばいい」となります。
真面目な人ほど、「プロセス」を大切にします。
それ自体は素晴らしいことですが、ビジネスにおいては「結果」がすべてです。
どんなに装備を整えたり、体を鍛えたりしても、山頂に辿り着けなければ意味がありません。
ラテラルシンキングは、以下の3つの力によって構成されています。
- 疑う力 → 当たり前だと思っている前提条件を「本当にそうか?」と疑う
- 抽象化する力 → 物事の本質を抜き出し、別のものに応用する
- セレンディピティ → 偶然の出来事を見逃さず、チャンスに変える
この思考法を身につけると、これまで想像もできなかった解決策が見えてくるようになります。
13個のオレンジをどう分ける?「正解」が一つではない世界
さて、先述した通り、「13個のオレンジを3人で公平に分ける方法」です。
ラテラルシンキングを知った上で、この問題にあなたならどう答えるでしょうか。
様々な解決方法が頭に浮かんでくると思います。
- オレンジをすべて搾ってジュースにし、計量カップで正確に3等分する。
- オレンジの種を植えて、将来実るたくさんの果実を3人で分け合う約束をする。
- 一番お腹が空いている人に多めにあげ、代わりに他の人は別のものを渡す。
「現物のまま分けなければならない」「今すぐ分けなければならない」という無意識の前提条件を外すだけで、これほどまでに選択肢は広がります。
ジュースにするという解決策は、個体差による甘さや酸っぱさの不公平まで解消してしまいます。
種を植えるという発想は、今の13個にこだわらず、未来の価値を最大化する投資家的な視点です。
そんなの「ずるい」って思われた方もいるかもしれませんが、この「ずるさ」こそビジネスで問題を解決するための鍵になるのです。
「疑う力」で思い込みをなくす
ラテラルシンキングの1つ目に重要なのは、「疑うこと」です。
これは他人を疑うことではなく、自分の中に深く根付いている「常識」や「前提」を疑います。
あるレストランが、注文から料理が出るまでの時間が長すぎるというクレームに悩んでいました。
ロジカルに考えれば、調理時間を短縮するか、スタッフを増やすのが正攻法です。
しかし、この店は「お客様は、待たされるのが嫌なのではなく、退屈なのが嫌なのではないか?」とラテラルに考えました。
そこで店内に面白い雑誌を置いたり、マジックを披露したりするようにしたところ、待ち時間は変わらないのにクレームが激減したといいます。
このように、「A=Bであるべき」という思い込みを捨てることで、コストをかけずに最大の結果を出すことが可能になります。
他にも、疑うべき項目を挙げてみます。
- 「仕事はデスクで行うもの」という前提
- 「会議には全員が出席しなければならない」というルール
- 「価格を下げなければ売れない」という固定観念
- 「このツールはこの用途でしか使えない」という限界
これらを一つずつ「本当にそう?」と疑うことで、目の前にある壁に小さなヒビが入るはずです。
「抽象化する力」で本質を掴む
ラテラルシンキングの2つ目に重要なのは、「抽象化」です。
これは、特定の事象から共通する「エッセンス」を抜き出す作業です。
これができると、全く関係のない分野の成功事例を自分の仕事に持ち込むことができます。
例えば、「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく『穴』である」という有名なマーケティングの話があります。
これをさらに抽象化すると、「穴を開けて何を実現したいのか?」という目的(本質)に辿り着きます。
本質が「壁に棚を付けたい」のであれば、ドリルで穴を開けなくても、強力な接着剤や突っ張り棒で解決できるかもしれません。
他にも抽象化できる例を挙げてみます。
- お掃除ロボの本質は「掃除」ではなく「時間の創出」である。
- スターバックスの本質は「コーヒー」ではなく「家でも職場でもない場所の提供」である。
- SNSの本質は「情報発信」ではなく「承認欲求の充足」や「つながりの確認」である。
本質を理解すれば、手段に固執する必要がなくなります。
あなたが今、真面目に取り組んでいるその業務も、一度抽象化してみてください。
「この書類を作る本当の目的は何だろう?」と考え直したとき、実は書類そのものが不要だった、という結論に至ることさえあります。
セレンディピティで偶然を必然に変える
ラテラルシンキングの3つ目に重要なのは、「セレンディピティ」です。
「セレンディピティ」は、日本語では「偶然の幸運」と訳されます。
ラテラルシンキングは、失敗や予期せぬトラブルさえも、新しい発見の種にしてしまいます。
例えば、ポストイット(付箋)の誕生秘話は、まさにその象徴です。
強力な接着剤を作ろうとして失敗し、「すぐに剥がれてしまう弱い糊」ができてしまったそうです。
普通の開発者なら「失敗作」として廃棄するところですが、「簡単に剥がせる」という特性に注目し、
世界的なヒット商品を生み出しました。
真面目な人は、計画通りに進まないことにストレスを感じ、失敗を隠そうとしがちです。
しかし、「ずるい」人は、想定外ことですら、価値を見出します。
「このトラブルは、何か別のチャンスを教えてくれているのではないか?」という視点を持つだけで、
あなたの職場にある「無駄なもの」や「失敗事例」が、宝の山に見えてくるはずです。
ロジカルとラテラルのコンボこそが最強
ここまでロジカルシンキングを悪く言ってきましたが、本書はロジカルシンキングを否定しているわけではありません。むしろ、両者を組み合わせて使うことの重要性を説いています。
- まず、ラテラルシンキングで「ありえない方向」を含めたくさんのアイデアを出す。
- 次に、ロジカルシンキングでそのアイデアが実現可能かを検証する。
突飛なアイデアばかりでは実行に移せませんし、論理的な検証ばかりでは平凡な結果しか得られません。
「ラテラルで広げ、ロジカルで絞る」
このリズムを意識するだけで、あなたの仕事の質は劇的に向上します。
真面目な人が、これまで培ってきた「論理的に積み上げる力」は、
ラテラルシンキングで得た斬新な種を、現実の果実へと育てるために必要な「肥料」になるのです。
今日からできる行動
まとめ
ラテラルシンキングは、今までの人生で刷り込まれてきた、「一つの正解に向かって最短距離で進む」ロジカルシンキングとは違い、答えは一つではないと教えてくれます。
現代の正解のない時代において、論理を深掘りするロジカルシンキングと、視点を水平に広げるラテラルシンキングを使い分ける「二刀流」の姿勢こそが、最大の武器となります。
常識を疑い、自由な発想で解決策を見つける「ずるい」思考をもつことで、あらゆる困難な道が、あっという間にショトカ(近道)に変わるはずです。

